2007年4月

本会議で「雇用保険法改正案」に対して反対討論

 4月11日の本会議で「雇用保険法改正案」について、急遽、私が民主党・新緑風会を代表して本会議での反対の立場での討論を行うことになりました。今回の改正内容は、国の負担割合を引き下げるとともに短時間労働者の受給資格要件を狭める等、労働者に負担を押し付けるものでとても賛成できるものではありません。さらには、法案の中身もさることながら、厚生労働委員会での審議前に厚労省事務局が、すでに法案が成立したとの内容の文書を与野党の国会議員に事前に配布をするという大失態を犯しました。こんなことから日頃の思いを込めて、あえてきつい内容での討論としました。
 その結果、予想通りと言うよりも予想以上の与党からのヤジと怒号で大変な状況になりました。負けずに大きな声を出したので、途中で水を飲み、たった10分間が大変長く感じました。貴重な体験をさせていただきました。その反対討論の内容は下記のとおりです、ぜひ目を通して下さい。
 これからも「おかしいことはおかしい!悪いことは悪い」とヤジを恐れず、全力でがんばろうと思ってます。

平成19年4月11日(水)参議院本会議

「雇用保険法等改正案に対する反対討論」

民主党・新緑風会 柳澤光美

民主党の柳澤光美です。私は、ただいま議題となりました「雇用保険法等の一部を改正する法律案」に対し、民主党・新緑風会を代表して反対の立場から討論をさせていただきます。  本論に入る前に、私は声を大にして強調しておきたいことがあります。言うまでもなく、本案件が当初予定された3月29日の本会議ではなく本日まで延びた理由であります。厚生労働省はこともあろうに、改正案が成立していないにもかかわらず成立を前提にした文書をつくり、われわれ国会議員に配布しました。これは大失態というよりも立法府に対する侮辱としか言いようがありません。単なるミスという言い訳では済まされません。審議が年度をまたいで延期されたのは当然のことです。
 私は、今回の大失態の背景には責任者である柳澤大臣の「女性は産む機械」という暴言に象徴されるように、厚生労働省の体質、つまり、上は大臣から下は出先の職員まで、国民の奉仕者であるべき公務員としての自覚にまったく欠け、モラルや規律が著しくゆるんでいることにあると考えます。厚生労働省は、国会だけでなく国民をなめていると言わざるを得ず、柳澤大臣ら一部幹部の処分だけで、とても許されることではありません。  さて、このようにぶざまな厚生労働省が提案した今回の改正案は、実に多くの問題点を抱えており、「顔を洗って出直せ!」と撤回を求めたいのが私の本音であります。以下、具体的に問題点をいくつか指摘したいと思います。
 戦後、失業保険として始まった雇用保険制度は、労働者にとっては貴重な命綱というべき役割を果たしてきました。現状の雇用情勢を考えれば、本来なら、充実、強化をはかるべきところを、改正案は国庫負担を削減することに重点を置き過ぎ、逆に国民に負担増を押し付けています。  私は、民間のあらゆる産業・業種に働く多くの皆さんのご支援で当選させて頂きました。そして、全国の職場を回る中で事業所閉鎖、店舗閉鎖、そして倒産と、働く者が苦しむ姿をずっと見てきました。ですから、私がめざしているのは、「まじめに働く者が報われ、正直者がバカを見ない社会の実現」です。ところが改正案はこれとは正反対の内容であり、労働者に対する愛情などみじんも感じられない冷たい中身に満ちあふれています。
 その象徴が、失業等給付に係わる国庫負担を本来の負担額の55%まで、大幅に引き下げた点であります。これは政府がもつ責任を放棄することに他なりません。失業給付における国庫補助は、制度がスタートした昭和22年当時は3分の1でした。その後、4分の1に引き下げられ、今回、当分の間ながら、再度引き下げることにより、失業給付全体の比率では13.75%になります。これだと、その3倍以上を労働者自身が負担することになり、セーフティネットとしての役割を果たせなくなります。労働者にとって冷たい仕打ちとしか言いようがなく、断固、反対する理由であります。
 さらに問題点として見逃せないのは、雇用保険の受給資格要件が、「週20時間以上および1年以上の雇用見込み」と改められたことです。これでは、正当な理由があって自己都合で離職した人や短期間で離職した人は、失業給付が受給できなくなります。非正規社員が1633万人と3人に1人になる中で、明らかに時代の流れと逆行するものと言わざるをえません。
 次に指摘したいのは、高齢者雇用継続給付と労働相談への国庫補助を廃止したことです。高齢者の雇用は65歳まで延長する方向になっていますが、大多数の中小企業にとっては15%の国庫補助があることが、定年延長を実現する最大の助けになっています。それが無くなれば、今後定年延長への支障が生じてくる恐れは十分考えられます。また、都道府県の事務だからとの理由で労働相談への国庫補助をなくすのは問題です。むしろ、個別の労働相談が増えている現状からすれば拡充こそ図るべきではありませんか。
 また改正案は、雇用保険3事業のうち雇用福祉事業を廃止することを盛り込みました。私は、厚生労働省がこの「福祉事業」という名のもとに、好き放題の無駄遣いをしてきたことを忘れることができません。「スパウザ小田原」に代表されるように2000箇所を超える勤労者福祉施設に、総額で4000億円以上のカネをつぎ込んだ挙げ句、ほとんどが赤字となり二束三文で処分しました。
 これだけの大失敗をしておきながら、厚生労働省の役人は誰ひとり責任をとっていません。民間企業ならとても考えられない無責任さです。同様の無駄遣いは、「私のしごと館」でも続いています。私の政治信条は「ムダにしません。汗と税!」。これからも徹底的に追及していきます。
 また、厚生労働省の今年度予算は前年比で2200億円削減されました。そのうち1800億円、つまり8割が雇用保険関係で占められています。柳澤大臣は「雇用保険財政が好転した!」と強調していますが、それなら労使の負担を軽減するために、今回の保険料率の引き下げ幅を0.4%ではなくもう一段引き下げるべきではありませんか。
 私は、日本がいま直面している雇用情勢に強い危機感を抱いています。なぜなら、雇用の現場では企業が正規社員をリストラし、かわりを非正規社員で補充する傾向がまだまだ改善されていないからです。「いざなぎ景気を超える好景気」を実感できているのはほんの一握りの階層だけで、あらゆる面での格差がますます拡大しています。 
 柳澤大臣、「女性が生む機械」と同じように「労働者は働く機械」ですか。必要なときに採用し、いらなくなったら解雇する。残業も付けずに働かせて、過労死するのは本人の責任。本当にこれで良いのですか。
 私は、労働者の代表が入らない「経済財政諮問会議」や「規制改革・民間開放会議」の中で、経営者の代表や有識者とされる人たちの偏った意見によって、雇用や労働問題が一方的に議論されていることに強い憤りを感じています。
 私は、日本の財産はまじめに働く勤労国民だと思っています。バブル崩壊から小泉改革までのおよそ15年、若者を中心にフリーターが200万人を超え、ニートは64万人。その人たちが今30代になっています。私たち団塊の世代が、どう頑張ってもあと10年。この若者たちが日本を担っていかなければなりません。確かに労働力人口の減少も問題ですが、それ以上に人材育成をおろそかにしてきた、この「ツケ」は取り返しがつかないほど大きいと考えます。
 私たち民主党は、国民が安心して働くことができ将来に希望が持てる、格差のない社会の実現をめざして、すでに「格差是正緊急措置法案」を衆議院に提案しています。これを最優先で成立させることが、真に国民のためになるものと考えます。「成長底上げ戦略どころか底抜け戦略そのもの」といえる改正案は、すみやかに撤回すべきであることを重ねて強調し、わたしの反対討論を終わります。